蜂って冬見かけないけど、どうしてるの?

▲ニホンミツバチ(養蜂)の越冬

 

冬蜂の 死に所なく 歩きけり

「冬の蜂」「冬蜂」「凍蜂」は俳句では冬の季語になる。この句は大正4年俳人村上鬼城51歳の時の句です。死ぬと運命づけられた冬の蜂が動作も鈍くなって飛ぶこともなく、這っている。先に死が待っているだけの運命を穏やかに受け入れるのではなく、死の時に向かって数瞬でも静かに歩いている。生きるということの凄絶な空虚と実相を自分に投影させた句です。

冬の蜂っていないわけじゃないんだけど、この句からも、元気いっぱいじゃないって判るよね。

ホントはどうしてるんだろうね、冬の蜂って。ちょっと書いてみました。

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|蜂って冬眠するの?

厳しい冬の環境をやり過ごして春の活動期に臨むには二つの方法がある。冬眠と眠らない越冬だ。

蜂は種類によってこの2つのパターンのどちらかをとる。一つはいわゆる「冬眠」という手段。これは仮死状態となるため、にエネルギーの消耗を長期間低く抑えられるという利点があります。その蜂の生存活動が年をまたいで行われることが前提になります。

ところが、一般に蜂は女王蜂を除いてその能力がないんです。働き蜂もオス蜂も3か月ほどの寿命しかないんですね。冬が来る前に、冬眠ではなくて永眠してしまいます。女王蜂はどうかというと、大体1年から3年ほどの寿命です。

スズメバチやアシナガバチのようタイプは、年をまたいで冬眠できる寿命の長さと能力のある女王蜂だけがこれを行います。

一方、ミツバチの種類は働き蜂の寿命が、そのハチの羽化した季節によって役割に異なるものが見られ、人間が極寒の環境で外に出ずに生活するように屋内で暖房を効かせてて暮らす越冬方法をとります。この2つのタイプを紹介します。

 

Type1:スズメバチやアシナガバチ-冬眠

▲(枯葉のベッドの下にアシナガバチの時期女王たちが冬眠しています。今はいっしょに仲良く寝ていますが、春になればそれぞれが巣作りを始めるため、壮絶な縄張り争いが待っています。骨肉の争いが始まるのです。厳しいね。)

 

スズメバチやアシナガバチでは、女王蜂のみが冬眠します。

ここでいう女王蜂は長生きしている現役と、種によって異なるが、8月-12から月頃に羽化し、交尾をし、巣分かれを行った新たな女王蜂候補です。一匹だけではなく、上の写真のように女王蜂候補数匹で冬眠することもあります。12月頃には女王蜂以外の働き蜂や交尾が終わり自分の仕事を全うしたオス蜂は死ぬのが定めです。

▲ 役目を終えたセグロアシナガバチのオス蜂の死、うーむ、ちょっと複雑だなあ…

 

このオスの悲哀だけはミツバチもスズメバチやアシナガバチのような蜂の生態系の頂点に君臨している蜂たちにも同様に言えることですね。人間が例外なのかね、

なんかいいところを見つけたいんだけど、ないねー。女系家族に生まれた肩身の狭い男の子という感じだね。

 

スズメバチやアシナガバチの冬眠場所は巣ではなく、巣から離れた山の中の積もった枯葉の中や朽ちた木の中だったりします。

次期女王が巣立ち、主が居なくなった巣は空の巣となって放棄されます。

 

 

空になったキイロスズメバチの巣(この巣には蜂がいないとおもって放置するのはよろしくない。他の蜂の住処ともなるからです。撤去すべきですね。)

冬眠する女王の寝室あまり日の当たらない温度が安定した日陰にある倒木や朽ちた木の中に穴を開け、入り口に木くずで蓋をして密閉されたベッドルームをつくる。

暖かくなる4月頃迄女王たちはひたすら寝て厳しい冬場を越える。

 

朽ち木の中で眠っていたところを無理やり起こされた女王蜂(オオスズメバチ)

 

スズメバチの冬眠を見つけたビデオはこれ。まだ寝てるところを無理やり起こしていますが、真似しないように!仮死状態の蜂に触れて刺された例もたくさんあります。

 

4月頃、冬眠から目覚めた女王蜂は、永い眠りで消耗したエネルギーを回復するために、花の蜜を吸い、栄養を補給し、ひたすらこれから待っているいそがしい毎日を生き抜いてゆくだけの十分な体力をつけ創めます。

そして、5月頃からたった一匹で自分の新しい王国を建設するため、営巣、産卵、巣の防衛、育児、食糧調達とすべてをこなす毎日を迎えるんですね。3児の父親でもあるボクとしては想像を絶しますね。やっぱ、男(オス)にはない種類の忍耐と本能だよね。こりゃ男親には無理な仕事だね。

春の女王蜂たった一匹の王国建設

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Type2:ミツバチ-冬ごもり

スズメバチやアシナガバチと比べてミツバチの冬眠はもう少し複雑です。働き蜂の数は圧倒的に多く、常に世代交代が行われており、短い寿命の中で働き蜂は三つの期間中どこで生まれるかによって寿命が異なります。

養蜂家がよく使用するセイヨウミツバチを例にとれば

女王蜂 

1年から3年

オス蜂

21日から32日程度

働き蜂

巣が充実し、餌も豊富な最盛期には15-38日

最盛期を過ぎ秋口から分封(ぶんぽう=旧女王蜂が働き蜂を引き連れて新しい巣を求めて巣分かれする)時期30日-60日

 旧女王とともに越冬するための長い時期 140日 

遅く生まれる働き蜂は長い命が与えられるが、それは女王とともに厳しい冬を越し、活動を再開する春に備えるために他ならない。

分封(ぶんぽう)したニホンミツバチの蜂球(ほうきゅう)。この中に巣を出て新たな王国を建設するために生き残らなければならない自分たちの女王蜂を護っている。

働き蜂のこの寿命区分を生きる個々の個体の間でもそれぞれの命の時計は進んでいて、組織全体の新陳代謝が行われている。しかし、冬近く遅れて羽化した働き蜂は、旧世代女王を守って巣を出た以上、女王とともに越冬し、その間も新たな巣を維持する特別な使命を担っている。

オス蜂は交尾が終わると速やかに死ぬ。中に交尾できなかったオスもいるが、元の巣に帰っても、繁殖期を過ぎれば用がないため、働き蜂達に追い出され、哀れ、一生を終える。(ここまで寂しいか!)

ちなみにオス蜂のことを英語ではDrone(なまけもの)という。ドローンって今じゃよく働く機械だけどねえ。

こう見て行くと、ミツバチの越冬は仮死状態で行ういわゆる冬眠ではなく、冬ごもりですね。ミツバチには育児のための適温があって、それが34度から35度くらいだそうです。だからそれより巣の中の温度が高くなると外に出て巣の中の密度を少なくし、室温を保ちます。真夏の過ごし方ですね。逆に冬場はどうかといえば、仮死状態の冬眠をするのではなく、巣の中の室温を30℃から35度に保ち、寄り集まって玉になり(蜂球=ほうきゅう)越冬します。(冒頭の写真参照)

食料は春から秋にかけて蓄えておいた花粉や蜜です。

 

しかし、必ずしもすべての巣が越冬に成功するわけではありません。冬ごもりの途中で何らかの事情で女王蜂が死んでしまったりすると、統率が乱れ、巣の状態が安定せず、死んでしまいます。このことから、越冬という手段はミツバチが社会性を進化させてゆく過程で獲得した経験作業であり、異常事態に対処できるほどの完成度を持っていないように思えます。 自然の中の生き物の厳しいところですね。

 

 

|まとめ

 蜂って冬見かけないけど、どうしてるの?

彼らは生き残り種の維持のために越冬しています。越冬には仮死状態で行う「冬眠」タイプと、巣に籠って、生きるための温度と体力を確保しつつ春を待つ「冬ごもり」タイプに大別して紹介しました。一定の社会組織を発達させた蜂の仲間では女王蜂が繁殖のための権限を握っています。

その女王蜂が自分を守るべき働き蜂のいないスズメバチやアシナガバチの仲間では最低限の種の保存を最も効率的な方法で行う、「冬眠」が採用され、女王蜂を護り、巣を維持する働き蜂が残っているミツバチの仲間では組織そのものを保存する「冬ごもり」がとられています。

単独で冬眠するスズメバチやアシナガバチは春になれば組織の構築にかかわる役割を全て女王蜂一匹で行う必要があり、ミツバチの仲間は残っている組織の拡充の中で女王蜂の役割は不変です。組織としての完成度はミツバチの方が進歩しているように思いますが、巣食物連鎖のどの位置にいるかによって異なるものだともいえそうですね。

おつかれさまでした。読んでくれてありがとう。

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