蜂の幼虫について! 蜂が幼虫を捨てるって本当?

蜂はせっかく生んだ産んだ幼虫を捨ててしまうことがある?子捨ては人間社会でだけじゃない?地球上に生まれてきて最も優れた組織をすでに500万年維持してきたミツバチですら子供を捨ててしまうことがあるとしたら、そのやむに已まれぬ理由って何だろうね。

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|蜂の幼虫ってどんなの?

蜂の幼虫は通常卵から蛹になるまでの間に第1から第4、第5令虫と呼ばれる蛹直前の段階までの成長段階を経過する。スズメバチの仲間も、ミツバチの仲間もこの点について変わりはない。そして、その卵を産めるのは女王蜂に限られる。女王蜂はオス蜂と交尾し精子の入った袋を女王に引き渡す。女王蜂はそれによって受精させた卵と未授精の卵を産み分ける。

受精卵はすべてメスになり、未受精卵はオスになる。将来の女王蜂となる蜂も、働き蜂となる蜂もすべて受精卵から生まれ、メスである。働き蜂もメスである以上卵委を産むこともできるが、交尾しないため、すべてが未受精卵であり、オスしか産めない。

スズメバチの働き蜂は肉食の幼虫たちに他の昆虫の筋肉組織を顎で咬み切り肉団子にしたものを与え、代わりに幼虫の繭になる直前の幼体(終齢虫=しゅうれいちゅう)の出す栄養たっぷりの唾液を摂取することによいって労働のエネルギーを得る。

巣が充実し、女王蜂候補を育てる頃になれば、女王蜂はすでに育児だけに専念するようになり、そのために特別な食事を女王蜂候補に与える。

ミツバチの場合は飼育蜂の係になった若い働き蜂が作り出すローヤルゼリーというミルクで女王蜂が作られる。ミルクを与えられるのは女王蜂として育てられるメス蜂と、羽化したばかりの若い働き蜂だけである。働き蜂の食事は成虫も幼虫も専らハチミツと花粉である。

そんな幼虫期は蛹になるまでいくつかの成育段階を経る。

 

 

|どんな蜂でも幼虫を捨てることがあるのか?

女王蜂が産み、自分より大きい終齢体まで大切に育てた幼虫を蜂が捨てることは確かにある。

しかし、その理由はスズメバチのようなシンプルな社会性を持つ蜂とミツバチのような緻密な社会を持つ蜂とはその理由が少し違うようだ。

 

Type1:スズメバチの仲間の場合

スズメバチ科の蜂が第5令虫(蛹になる直前)に近い幼虫を咥えて重そうに飛んで行くのを見たことがある。昼間の勤め先の近所にあったトタン屋根の古い物置小屋の庇のすぐ下にあったキイロスズメバチの巣だった。巣の下から少し離れたアスファルトの通路には捨てられた幼虫がいくつも蠢いていた。アリがたかっているようだったが、9月の終わり頃だったと記憶している。幼虫が重すぎで飛べずに引きずってゆくその重い羽音が異様だった。

 キイロスズメバチの子捨て

 

 

酷暑の中で獲物が少なく、すべての幼虫を育てるには足りない。終齢虫(しゅうれいちゅう=蛹になる直前の幼虫)から口移しでもらう甘い体液は成虫の重要な栄養源のはずだ。その数を減らさねばならないほどの危機的状況なんですね。

ミツバチの巣を襲って幼虫を狙うのもこの頃だが、その通路には蟻がたかった幼虫とは別に頭部がなく、体液がこぼれた後に残った肉片がいくつもあった。肉団子?

彼らは残った幼虫に自分たちの兄弟で作った食料を与えなければならない状況だったのだろうね。

幼虫を捨てる行為を始めたスズメバチは集団ヒステリーのような状態で、非常に攻撃的で危険だということです。

スズメバチの仲間の蜂は口減らしをするため、子捨てを行うだけでなく、捨てた幼虫を食料としてとして残った幼虫のために加工する。凄絶だね。

 

 

Type2:ミツバチの仲間の場合

ミツバチが幼虫を捨てるのにはいくつかの原因があるといわれている。

サックブルードウイルス:子捨ての原因の90%を占める。サックブルードという名称は感染した幼虫の体と表皮との間に多量の液が溜まり、まるで 幼虫が水を入れたビニール袋のなかに浮いているような状態になることに由来している。このウィルスに感染すると幼虫は繭まで成長することなく死んでしまう。

ダニなんかが媒介するらしいけど、最初の段階は成虫が感染した幼虫を育房から引きずり出し、巣の外に捨てようとするときに自分の嘴に菌を付けてしまい、そのまま給餌をして蔓延するという過程が考えられるという。菌を媒介するダニを駆除することが必要となり、これは養蜂家の役目だろうね。

感染は広範囲になるため、大量の子捨てを発生させる。今は大量の感染に対して98%の完治力のある治療法があるそうです。ただ、蜂にすれば、治療という選択は持ってないんだから全体にとって危険な幼虫を捨てて他を護るという方法しかないんだよね。

 

貯蜜不足:食料の蓄えが巣の隆盛によって増え過ぎた子供たちを養うのに足りなくなってきたとき、夏場蜜を作るための花が少なくなり、増え過ぎた蜂の数をコントロールするために健全である幼虫を捨てることもある。また、越冬を前にして幼虫を間引き、現役の働き蜂が通常より長生きすることによって巣自体を護ろうとする。当然この時は女王蜂と交尾できなかったオス蜂も非生産的な邪魔者として巣の外に追い出される。

働き蜂によって口減らしの対象となったオス蜂達。その後ろに幼虫も見える。

 

農薬(除草剤を含む)散布:これによって散布される農薬の中に、成育障害を起こす成分が含まれる場合は育児蜂によって不健全な幼虫が発見され、見分けられ、捨てられることになる。巣箱のある付近に消毒する田畑が広がっていたり、大きな公園があって桜の樹なんかに害虫駆除の農薬散布がされたりすると発生するそうだ。

 

外気温の急激な低下による凍死:成虫は外気温が14℃以下に下がると、蜂球を作り、体温を保持しますが、蜂数が少なく、蜂球の外にいる幼虫は投資するため、働き蜂によって巣外に運ばれる。

 

無育児症候群:夏場の食糧が少ない時期、育てるべき幼虫が少ない場合。オオスズメバチに襲われ、巣が大きな被害を受けたような場合。育児する働き蜂に過度なストレスがかかり、育児をしなくなることによって死んだ幼虫を働き蜂が巣の外に捨てるような場合。

 

養蜂家がスムシと俗称する蛾の幼虫:この幼虫が巣に寄生し、巣を食い荒らす際、幼虫を傷つけるために働き蜂によって外に出される。スムシは多かれ少なかれ、巣に寄生するものだが、養蜂の場で衛生状態の劣化から、スムシの繁殖が抑制できなくなった時には蜂自体が巣を捨てることがある。経験の少ない養蜂家が気づくのは最初にスムシによって死傷した幼虫が巣外に転がっているときみたいですね。

  スムシによって食い荒らされ、捨てられたミツバチの巣

 

 

|まとめ

蜂の幼虫について 卵から幼虫期を経て蛹(=さなぎ)の形になるまで、蜂の子はいくつかの段階を経ます。幼虫はスズメバチの仲間のように昆虫の肉を与えられて育つものと、ミツバチの仲間のように、花粉と働き蜂によって花の蜜を加工した蜂蜜を与えられえて育ちます。

そして、女王蜂として育てられる幼虫と、初期の働き蜂の幼虫には働き蜂によってミルク(ローヤルゼリー)が与えられます。

スズメバチの仲間の幼虫は、ただ餌を与えられるだけではなくて、蛹になる直前の終齢虫(しゅうれいちゅう)の時期、働き蜂にその労働のエネルギーとなる栄養が豊富に含まれ唾液を摂取させることによって働き蜂に対価を与えます。

 

蜂が幼虫を捨てるって、本当でした。子捨ての理由はスズメバチは働き蜂の数と増え過ぎた子供の数とのバランスを調整するために幼虫を捨て、間引き、時に自ら育てた子供の肉を残った幼虫に与える凄絶な生き方をします。

一方ミツバチは、働き蜂自身の食糧と幼虫たちの食糧が同じものであるために、生存のコントロールとして幼虫を間引きます。

また、育児を行う働き蜂は幼虫の健康状態を観察し、ウィルスや、農薬の影響や、急激な外気温の変化、によって死んでしまった幼虫や、育つ見込みのない幼虫を組織全体の生き残りのために切ってゆきます。

また、過酷な外的の侵入時の闘争や夏場のストレスで自らの仕事を放棄して死なせてしまった幼虫を放り出すこともあります。ミツバチの場合子捨ての理由は様々でした。

両者の違いが際立つのは、スズメバチのこの力は強く、女王蜂にすべての力が備わっている点で対処的な危機管理ですむことが多く。ミツバチの場合小さく、個の力が微力であり、集団を確保するために機能しないものを除外してゆくという社会性の一端を見る気がしました。

ところで、ミツバチから350万年以上遅れて地上に登場した人間は、確かに社会制度をいまだに完全に確立したとは言えません。その点においてミツバチは500万年前に、すでに完全に近い体制を作り上げていると言えます。

しかし、一部ではありますが、人間には、たとえ成長してゆく過程で他と比較して機能的に欠けていても、その個体を慈しみ、尊敬し、理解しあい、同じフィールドで暮らしてゆこうとする心の成長が一瞬たりとも停止せずにわずかずつ進みつつあるんですよね。

不完全ながら、わずかずつ変化し成長する人間は素晴らしいですね。

おつかれさま 読んでくれてありがとう

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