
「ギヤァァァァァァァっ!グロい・・・」
ハリガネムシってご存知でしょうか?
名前に聞き覚えが無い人もカマキリのお腹の中から出るウネウネのアレと言われれば、大概の人が見覚えのある生物のように思います。
まあ、初めて見た時のインパクトが強すぎて,忘れたくても忘れられないとの感想もありそうですけどね。(笑)
私自身も初めて見た時の記憶は強烈に残ってはいます・・・が、正直、あまり興味を持てる対象とはなりえませんでした。
けれども、今回調べてみるにつれ数々の知らなかった実態と謎に遭遇する事となりました。
その実態と私自身が感じる謎を検証していきたいと思います。
カマキリには寄生虫がいる?!

ハリガネムシと言えばカマキリの寄生虫と一般に連想されます。
特に寄生されやすい種類のカマキリがハラビロカマキリです。
このカマキリの寄生率は高くて9割ほどが寄生されているといわれます。
理由は、ハリガネムシに寄生されている事が多いカゲロウを主に食べる為です。
カマキリはハリガネムシにとっての最終宿主であり、最後には内臓を食い荒らされて死に至らしめられる事となります。
ハリガネムシってそもそも何なん?
ハリガネムシ(針金虫)とはハリガネムシ綱(線形虫綱)ハリガネムシ目に属する生物の総称です。
ミミズなどと違って体に伸縮性がなく、のたうち回るような特徴的な動き方をします。
体は左右対称で、種類によっては体長数 cmから1 mに達し、直径は1 – 3 mmと細長い。表面はクチクラで覆われていて体節はありません。
また、クチクラで覆われているため乾燥すると針金のように硬くなることからこの名がついています(クチクラとは、表皮を構成する細胞がその外側に分泌することで生じる、丈夫な膜です)
さまざまな生物において、体表を保護する役割を果たしています。人間を含む哺乳類の毛の表面にも存在します。英語でキューティクル、日本語で角皮とも呼ばれます。
ハリガネムシの種類は世界中で記載されているのは326種ですが、実際には2000種以上いるといわれています。日本では14種が記載されています
なぜカマキリに寄生しているの?
ハリガネムシが生まれるのは水の中。まだ数mmしかないハリガネムシは、ここでボウフラや、トンボの幼虫ヤゴ、カゲロウなどに食べられるのをひたすらに待ちます。
ここで捕食された小さいハリガネムシは、体内ですくすくと・・・成長はしません。成長すると30cmにもなるため、数mm~数cmしかないこれらの生き物では小さすぎるのです。
ハリガネムシはひたすらに待ちます。この寄生した生き物達が他の生物に捕食されるのを。
さらなる目的はカマキリやカマドウマ、コオロギといった虫たちです。
寄生した仮宿がうまいぐあいに捕食されると、やっと体内で成長を始めます。
カマキリなどがエサをとっても、体内にいるハリガネムシが食べてしまうわけです。
これはお互いが何らかの利益を共有している共生ではなく、明らかにカマキリだけが被害を受けている寄生に分類されます。
ハリガネムシの生涯

オスとメスが水の中でどのように相手を捜し当てるかは不明ですが、雄雌が出会うと巻き付き合い、オスは二叉になった先端の内側にある孔から精泡(精子の詰まった囊)を出し、メスも先端を開いて精泡を吸い込み受精させる。メスは糸くずのような卵塊(受精卵の塊)を大量に生みます。
1、2か月かけて卵から孵化した幼生は川底でうごめき、小型の水生昆虫が取り込む。幼生は身体の先端に付いたノコギリで腸管の中を進み、腹の中で「シスト」の状態になります。
水生昆虫のうち、カゲロウやヤゴやトビケラなどの昆虫が羽化して陸に飛び、カマキリやカマドウマなどの陸上生物に捕食されると寄生し、2 – 3か月の間に腹の中で成長します。
まれに何らかの要因でシストもしくは幼生のまま水辺近くの草の露に排出され、それを草ごと摂取したバッタやコオロギなどの草食性昆虫に偶発的に寄生することもあります。
成虫になったハリガネムシは宿主の脳にある種のタンパク質を注入し、宿主を操作して水に飛び込ませ、宿主の尻から脱出します。そして池や沼、流れの緩やかな川などの水中で自由生活し、交尾・産卵を行います。
寄生生物より外に出る前に宿主が魚やカエルなどの捕食者に食べられた場合、捕食者のお腹の中で死んでしまいますが、捕食者の外に出ることができるケースもあります。
カワゲラをはじめとする水生昆虫類から幼生および成体が見つかることがあります。
また、昆虫だけではなくイワナなどの魚の内臓に寄生する場合もあります。
ハリガネムシの謎・・・・
私が初めてハリガネムシを水生生物と知ったときも驚きを感じましたが、調べていくうちにその他いくつかの謎も抱くようになりました。
以下、それらを述べさせていただくと共に専門家の記事情報や自分なりの感想も交えて解明に迫りたいと思います。
カマキリに取り込まれる際にかみ砕かれないの?

カマキリが餌を食べる際は口吻の牙で細かく噛み砕いて取り込んでいきます。
その際にハリガネムシの幼生が無事に無傷で取り込まれるものか?と思いました。
それはシストの状態であることでクリアされているように思います。
シストとは、一時的に小さな細胞体や幼生が厚い膜を被って休眠状態に入ったような状態になる事であり、それが防御形態になっているのでしょう。
カゲロウやヤゴ・トンボの体内で成虫にならないの?
最終宿主をカマキリやカマドウマとする事で30センチ以上の成虫となるわけですが、それは必ずしも必要なのでしょうか?
カマキリなどに捕食される率も100%ではないでしょうから、成長度を抑えてもその手間暇は排除しても良いのではと思いました。
このことに関しては自分なりに考察してみましたが、進化による自然淘汰の結果では?との考えに至りました。
元々は、カゲロウの幼虫→羽化して成虫→カマキリに捕食→カマキリの中で成長と、このような複雑な形態ではなかったのではと思われるのです。
カゲロウの中で成虫となれていたものが、たまたま大型昆虫に捕食されて無事体内に取り込まれるパターンが発生してより大きく成長する事が出来た。
それは大量の卵を生み出せる結果につながり、種全体がそちらの方向へ移行したかもしくはカゲロウの中で成長するものとカマキリの中で成長するものとに分かれた。
後者の方が効率が良く生存率が高かったため前者は滅びてしまった。
自論ではありますが、このような考えに至りました。
どうしてカマキリに水辺の場所がわかるのだろう??

最終的にハリガネムシはカマキリの脳を操って産卵のために水辺へ向かわせます。
でもカマキリって水辺の生き物でもないような?
数百メートル離れた場所から飛んできたトンボなんかを食べて寄生されたとしたら、それってカマキリにしたら結構な距離ですよね。
それに関しては水に対してではなく光に対して脳に働きかけているようなのです。
コオロギでの本格的科学実験記事の抜粋
「脳内で発現しているタンパク質をチェックできる技術が2000年以降に出てきたので、それを使った研究がされています。いろんな段階のコオロギ──ハリガネムシに寄生されているやつ、寄生されてないやつ、寄生されているけれどもまだ行動操作を受けていないと思われるやつ、あるいは寄生されてお尻からハリガネムシを出してしまった後のやつ。
そういうものを集めてきて、脳内に発現しているタンパク質を徹底的に見たわけです。すると、まさに飛び込もうとしているようなコオロギの頭の中でだけ、発現しているものがいくつか見つかりました。
それをさらに『ホモログ解析』という手法で調べると、神経の異常発達にかかわったり、場所認識にかかわったり、あるいは光応答にかかわる日周行動に関係したりするタンパク質と似ていると分かったのです。他の生物の研究で機能が確かめられているものと似た構造を持っていたという意味です。その中には、ハリガネムシのほうがつくったと思われるものも含まれていたのです」
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「行動実験と分子生物学的な実験の結果を合わせて考えると、おそらく神経発達をグチャグチャにして異常行動をさせながら、光応答の仕方を変えて、水辺に近づいたら飛び込むというような、2ステップで行動操作を巧みにしているだろうことが、今は想像されています」
上記の内容から、カマキリを薬物中毒者のようにフラフラの状態にして、歩き回らせたあげくにキラキラした水の反射を感知したら飛び込ませるってことらしいです。
ハリガネムシ自体はカマキリよりもかなり下等生物に分類されるわけですが、この様な能力をどのように獲得できたが不思議です。
まさに、自然の神秘としか言いようがないですね。
まとめ
最初はグロいイメージだけが強かったハリガネムシですが、いろいろ興味深い生態を知ることが出来ました。特に寄生対象の脳を洗脳するイメージは脅威を感じます。
もし人間が寄生されたらと思うとゾッとしますね。犬や猫は普通にカマキリとかを食べる事もあるんじゃないかな? でもそこは大丈夫とのことです。
基本的に昆虫以外は寄生する事は出来ず体内に入ってしまっても普通に排出されるとの事。けれども川の水を飲んだことが原因で口からハリガネムシが出てきた報告例もあるとの事なので、川で泳いだりするときは注意した方がよいかもしれませんね。(笑)