
カマキリと言えば獰猛な肉食昆虫のイメージがあります。実際、幼虫の時から1日~2日に1回のペースで捕食しているといわれます。これは一生の間に100匹ほどの捕食を行っている計算になります。
「草原のハンター」と呼ぶにふさわしい驚異的な捕食能力を有するカマキリですが、昆虫界屈指のスピードを誇るゴキブリさえも狩ることが出来るのでしょうか?
今回、カマキリの生態や特徴を紹介させていただき、その能力と可能性を検証したいと思います。
カマキリの生態
カマキリは全世界でおよそ2,000種前後もの種類がいると言われています。しかし、まだまだ研究が進んでいないというのが実情です。一般的にはメスの方がオスよりも体が大きくて力も強いです。
成虫には細長い前翅と扇形に広がる後翅があるものの、ほとんどのカマキリは飛行が苦手であり、短距離を真っ直ぐに飛ぶことしかできません。
メスにいたっては、自分の体の大きさと重さのためにほとんど飛ぶことができず、翅は威嚇に使われることがほとんどです。
頭部と前胸の境目は比較的柔らかく連結されているため、頭はぐるりと回転できるほどに柔軟です。そして夜目もきくので、夜間にも獲物を襲うこともあります。
複眼の色を黒くすることによって集光力を上げ、暗闇での視界を維持しています。
日本に生息するカマキリの種類

オオカマキリ

名前の通り日本に生息するカマキリの中でも最大の種類です。
大きさはオスが68-90mm、メスが75-95mm。
他のカマキリと区別するポイントは後翅の付け根が暗紫褐色しているところです。
また、鎌のような形をした前脚には模様がなく、前脚の間の胸は淡い黄色になっています。
生息する場所は、川原や藪などの草むらにいるので、誰でも身近な場所でみる機会はあると思います。
チョウセンカマキリ

チョウセンカマキリと言われるように日本以外にも中国や朝鮮半島に生息しているカマキリです。
大きさはややオオカマキリより小さく、オスは65-80mmでメスは70-90mmです。
区別が難しいのはオオカマキリとの違いですが、後翅の縁から中央に暗褐色の筋があればチョウセンカマキリです。
また、わかりやすい箇所で言えば、前脚の付け根の間は山吹色(オオカマキリに比べて明るい黄色)をしています。
ウスバカマキリ

ウスバカマキリは世界的に分布しているカマキリで、日本にも生息します。
しかし、日本ではウスバカマキリの生息数は、オオカマキリに比べて非常に少なく、場所によってはレッドデータにも指定されている場合があります。
この種類は複眼の後に黄色い横線が入り、前脚の付け根の内側には黒い楕円形の模様があるので他の種類とは簡単に見分けることができます。
また、前述のオオカマキリやチョウセンカマキリよりも小型でオスメス両方とも最大66mm程度にしかなりません。
コカマキリ

名前の通り小型のカマキリで体色は褐色のものが多いです。
極稀に緑色のものや赤味の掛かったものもいます。
前脚の内側に黒い模様があるので簡単に見分けることができます。
ハラビロカマキリ

東南アジアに広く分布しており、日本には本州以南に生息しています。
名前の通り腹部の幅が広くてずんぐりむっくりしています。
また、前脚の縁に黄色い突起が複数あるので、鎌を見ればすぐにハラビロカマキリだとわかります。
ヒナカマキリ
ほとんどの方はカマキリの幼虫だと思っている可能性があるのがヒナカマキリです。
体長はオスが12-15mmでメスが13-18mmと大きさが2cm以下の超極小です…。
背中の中央にこげ茶色の縦筋があることから他のカマキリの幼虫とは区別できます。
森の落ち葉の上に生息する種類で地上生活に適しているため、茶色や黒ぽい個体しかいないのも特徴ですね。
ヒメカマキリ
本州、四国、九州、対馬、屋久島、奄美大島に分布する小型のカマキリ。
サイズはオスが25-33mm、メスが25-36mmと比較的小さいです。
他のカマキリと区別できる箇所は後翅が長く、前翅からはみ出してしまっています。
カマキリは攻撃的なものが多いですが、この種類は死んだふりをするのが特徴ですね。
また、ややこしいことに九州にはサツマヒメカマキリという種類がいます。しかし、ヒメカマキリとの違いは明確にされておらず、別種なのかどうかもわらない曖昧とのことです。
カマキリとゴキブリは近縁種だった?!
カマキリは世界でおよそ2千種いると言われていますが、まだ研究が進んでいないのが実情です。したがってこれだけ有名で人気がある割に、その生態の深いところまではほとんど知られていません。
日本には、オオカマキリ、チョウセンカマキリ、ハラビロカマキリなどがいますが、国内にどのように分布しているかとか、いったい何種類のカマキリが生息しているのかということについても、ほとんどわかっていないのです。

カマキリはカマキリ目に分類される昆虫ですが、そのほかの分類法もあります。それは網翅目に属するというものです。この仲間にはゴキブリとシロアリがいます。
実はカマキリは系統的にはゴキブリ類から派生してきたようで、色や形が似ているバッタやキリギリスなどの直翅目とはかなり遠い関係なのです。
そう言われてみれば、平べったい背中と腹の感じはよく似ていますし、翅の付き方やその飛び方も似ています。卵鞘(らんしょう)を作るという特徴も同じです。
直翅目はバッタやコオロギなど、跳躍ができるように後脚が発達(跳躍肢)していますので、前脚が発達したカマキリとは決定的に違うのです。
カマキリのあの鎌は、昆虫ですから脚6本のうちの前2本が変化したものです。
カマキリの狩猟能力がヤバイ

カマキリの鎌の力は強く、人間の大人の指でも挟まれると血が出ることもあります。その力は人間サイズで仮定すると3tもの腕力に相当します。
鎌脚を構えてから振り下ろすまでの速度はわずか0.05秒であり、人間が目で見て反応できる0.1秒をも上回ります。
視界は180度以上あり、動くものを認識するとフレキシブルに動く首で、獲物を真正面に見据えると、距離を正確に測って鎌で捕えます。
掴んだら離さないパワーで時にはカマキリ同士の共食いも行います。自分と同程度な大きさの蛇やネズミの捕獲例も目撃されています。
強力な消化能力を持ち、餌があれば食べ続けるほど食欲旺盛です。餌を与え続けるとお腹がパンパンに膨らんで、はち切れることもあるそうです。
カマキリVSゴキブリ
この両者、カマキリは攻撃することしか知らず(敵に後ろは見せない)、ゴキブリは逃げることしか知らず(敵前逃避)
まさに狩る側と逃げる側のエキスパート同士の対峙をイメージします。
ゴキブリはどれほどの逃走能力を秘めているのでしょうか?ゴキブリは1秒間に1.5m移動するということです。1.5mといっても体長の40~50倍の距離です。
時速に換算すると170km、瞬間的には300km以上のスピードがでることもあるとのこと。新幹線なみ、もしくはそれ以上に速いことになります。
さすがのカマキリでも全速力で走るゴキブリを捕らえることは不可能と言えます。
実はカマキリは獲物を追いかけて捕らえることはあまり行いません。相手を待ち伏せるか、そろそろと近づいて捕えます。その為、一撃必殺のスナイパーと表現されたりもします。

ゴキブリに対しては不意打ちでしか有効打を放つことは出来ないでしょうが、捕えられたらコカマキリサイズの小型種からも逃げることは不可能でしょう。
まとめ
- カマキリは動くものは何にでも反応して襲ってきます
- 飛行が苦手で短距離をまっすぐしか飛べない
- メスはさらに飛行が苦手
- 頭は180度回るくらい柔軟
- カマキリはゴキブリの系統から派生している
- 未だにその生態はナゾに包まれているところが多い
それはカマキリ同士でも動物でも関係なく、同じぐらいの生物全般が対象です。
もし、人間が同サイズのカマキリに捕らえられたとしたら?
それは、成獣で3トン程のインド象かブルドーザーに押さえつけられたようなものです。
とても太刀打ち出来るものではありません。
カマキリ…恐ろしや…。