
春から秋にかけて活動するカマキリは意外と人間の近くで生活しています。基本的には緑が多いところに生息していますが、都会の中にある小さな公園でも見掛けることがあるでしょう。
私自身も好きな昆虫でありますが、結構人気の高い昆虫だと思います。
日本には9種のカマキリが生息しています。一般に、オオカマキリ・ハラビロカマキリ・コカマキリがよく知られるところです。
今回は特によく見かけるオオカマキリの生涯を紹介していきたいと思います。とはいっても各々のカマキリは生活場所や地域の違い以外は、特に生態に大きな違いは無いとおもわれますが・・・??
カマキリの孵化

カマキリは春の4月~5月にかけて卵から孵化します。ひとつの卵嚢(らんのう)にはおよそ200~300個の卵が入っており、この卵嚢の中に居る時点で成長を始めています。
卵の中で徐々に成長したカマキリは孵化前になると既に卵ではなくなり、前幼虫(ぜんようちゅう)と呼ばれる幼虫のひとつ前の状態になります。
気温が暖かいと1カ月ほどで前幼虫となれるそうで、稀に9月に産卵された卵から10月に幼虫が生まれてしまう事があるようです。通常は春の暖かな晴天の午前中に体をくねらせながら沢山の前幼虫が卵嚢から姿を現します。
卵嚢から出てきた前幼虫はそのまま地面に落ちるわけではなく、お尻から細い糸を伸ばし、しばらくぶら下がっています。まだこの状態は前幼虫ですので手も足も触覚も確認できません。体全体が薄い皮で覆われていて芋虫のような形状です。
ぶら下がってしばらく経った前幼虫は器用に体を動かして皮から出てきます。この時点で初めて幼虫となるのです。無事に幼虫になったカマキリは、次々に産まれてくる仲間を乗り越えて近くの小枝などに移ります。
ですが、まだまだ手足の力が弱いこの段階では些細な風でも飛ばされてしまうことも少なくありません。中には、無事に幼虫になった直後に外敵から捕食されてしまうこともあり、クモやトカゲなど、色々な生き物がカマキリを狙ってやってきます。
また、生まれた兄弟同士での共食いも普通に見られます。もうこの時点で小さな鎌で捕食する能力を得ています。この頃の赤ちゃんカマキリにはまだ翅はなく、枝や葉を伝って移動することしかできません
幼虫時代

産まれてから2~3日経つとだんだん体に色が付いてきます。これで少しは外敵に見つかりにくくなりますが、まだ卵の近くをウロウロしていることが一般的です。
そこから更に数日経つと、徐々に行動範囲を広げていき、卵や仲間とも離れていってしまいます。色々な昆虫と出会い、捕食される側から捕食する側へと変わっていきます。
卵から孵化して成虫になるまで、カマキリは6~7回脱皮を繰り返します。脱皮をしている間は完全に無防備になるのでなるべく早く古い皮を脱ぎ捨てる必要があります。
個体差や脱皮回数により差はあるものの、脱皮に掛かる時間はおよそ30~60分程度です。ですが、個体差が大きく中には10分程度で済ませてしまうものもいます。
この脱皮によっても徐々に体に色が付いていき、緑色もしくは茶色が濃くなり、より環境に馴染んだ色になり外敵に見つかりにくくなっていきます。
カマキリの色について
カマキリは緑色のイメージが強いようですが茶色の個体も結構多いですよね。
これは違う種類であるだけでなく、同じ種類のカマキリでも緑系と茶系とに分かれています。オオカマキリやハラビロカマキリには緑と茶色の個体が存在します。コカマキリの場合は、ほぼ茶色の個体しか存在していないようです。
これは環境に合わせた保護色なので主に地面を歩くコカマキリはほぼ茶系で、オオカマキリの場合は緑系と茶系が5:5であり草原と木の枝・枯れ葉に対応しています。オオカマキリの場合は生まれた時にどちらの色になるかが決定されています。
けれども緑系が草原で、茶系が木の枝と生活域を選ぶわけでなく、それは運しだいのようです。
草原の中での茶色の個体や、その逆の場合は敵に捕食されやすく生存率も低くなります。なんとなく不利な面も感じてしまいますが、それは急に環境が変わっても全滅を防ぐための自然の知恵なのかもしれません。
脱皮のたびに周りの環境の色に少しずつ体色も変化していくとの説もありますが、実際に証明はされていないようです。
羽化

夏の暑い日差しが続く8月頃にカマキリは最後の脱皮を行います。この最後の脱皮を行って初めて翅が使えるようになり、成虫となるのです。羽化したカマキリはきちんと翅があり、皆さんが思い浮かべるようなカマキリの姿形をしています。
この最後の脱皮は体が大きいこともあり、これまでの脱皮よりも時間が掛かることが一般的です。古い皮が破れだし、皮を脱ぎ捨て、翅が完全に伸びきるまで2時間以上かかることも珍しくありません。
羽化したばかりの成虫はまだ体が柔らかく翅も淡い色となっています。数時間すると徐々に色が濃くなってきますが、飛ぶことはできません。
そこから丸1日も経てばしっかり色がつき、体も硬くなっています。これで完全な成虫になりました。
交尾

羽化から1~2週間経った個体は交尾を始めます。オスにとっては正に命懸けの交尾で、メスの機嫌次第では食べられてしまうことも少なくありません。
一説によると、生殖する重要な時期に手っ取り早く栄養を摂るためにオスを食べると言われていますが、詳しい証明はされていないそうです。
ある研究論文では交尾の際オスがメスに食べられる確率は13%~28%とされていました。なので、必ずしもオスが食べられてしまうわけではありません。
交尾が終わりメスに捕食されなければ、それぞれのカマキリはまた別々の方向へ別れていきます。オスは別のメスと交尾することもあり、逃げ足の速いオスは数回の交尾が可能なようです。
オスを食べて栄養を得たメスは、食べてないメスより大きな卵を産んでいるとの研究結果も報告されています。
産卵

交尾が終わってからしばらく経った10月~11月になると、カマキリの産卵が始まります。この時期にはお腹が膨れたメスのカマキリを沢山見掛けることができます。
しかし、オスはほとんどいなくなっています。交尾の際メスに捕食されたか、寿命を迎えてしまった個体が多いのでしょう。
メスは来年も子孫を残すため産卵を行います。お尻の先から白いクリームのような泡を丁寧に形づくり、中に卵を埋めていきます。ひとつの卵嚢に200個ほどの卵を産むため産卵は3時間以上かかることも珍しくありません。
お尻から出た直後の卵嚢は非常に柔らかいですが、時間とともに硬くなっていきます。この卵嚢によって翌年の春まで卵が守られます。
これだけ大きな卵嚢なので一匹のメスで一つだと思っていましたが、実際は一匹でいくつかの卵嚢を産み落とします。中には5個の卵嚢を産み落とした事例も報告されています。
カマキリは最後の産卵を終えると力を出し尽くしてしまったのか元気がなくなります。ほとんど移動することもなく、同じような場所でじっとしていることが一般的です。
このような状態になっても外敵が現れる可能性はありますので、近くに何かが寄ってきた際には顔だけそちらを向け、危険が迫っていないか確認します。
それからしばらくすると、カマキリは静かに死んでしまいます。
まとめ カマキリの寿命は・・!

カマキリの寿命は、孵化してからは春から秋にかけての半年が平均的です。
思ったより短い感じを受けましたが、飼育下での餌と温度が管理された状態では冬を超えて1年以上生存することも珍しくないようです。
野生下では日本の気候条件に合わせて懸命に生きている感じがしますね。そうしてみると、見た目はいかつい昆虫界屈指のハンターもなんだかいじましく思えてきます。
見た目と言えばカマキリは個体ごとに微妙に色の濃さが違っていたりしますが中には突然変異なのか金属的な光沢をもつ個体も確認されています。
そのような個体差の違いが目立つのも、カマキリの人気が高い理由のひとつかもしれませんね。