
今回はスズメバチの駆除、という危険な作業が素人の僕たちにできるかということを考えてみました。色々調べ、自分の経験を加味してみるといくつかのレベルでできそうという感じですね。
ただし!個人的な経験からして、スズメバチ以外であれば「何とかなる」とリラックスしていますが、基本的にスズメバチの駆除は業者に依頼するべきだと思っています。
そのうえで、スズメバチのシーズン、種類、攻撃性等を知り、安全にかかわる準備をしたうえで考えたことだと理解してね。
スズメバチの駆除に必要な条件
ここではオオスズメバチに比べ、やや小型ですが、攻撃性については非常に高く、毒性も強く、しかも民家の軒下、屋根裏など住宅地に生息環境を移してきたキイロスズメバチについて見てゆきます。
オオスズメバチのように、土の中や木の洞に営巣するタイプは中の状況がわからないので巣の大きさが掴めません。見つけた時はもう、巣がかなり巨大化しており、危険が大きすぎます。
業者に依頼しましょう。また、オオスズメバチは最近、季節外れの大雨や長雨で土中の巣が浸潤し、新たに民家の床下などに新しく巣をすることがあります。作業の新にくい場所であればやはり、業者に任せた方が安心です。
Step1 駆除に適した時期:スズメバチの種としての活動サイクルを知ろう

ポイントは女王蜂が巣作りを開始する5月から徐々に働き蜂の数が増え、巣が拡大してゆく7月に入るまでの2か月間ですね。
このシーズンは巣も小さく蜂の数も少ない。スズメバチはモンスズメバチを除き夜間に活動するものはいないので、駆除は夕方から早朝にかけて行いますが、巣が小さいと夕刻までに活動が終了し、蜂がすべて巣に帰っている状態であり、女王蜂を含め、新たに営巣を再開する芽を全て刈り取ることができます。
普通、スズメバチの巣に気が付くのは庭や玄関先でスズメバチを見かけるようになったり、室内に迷い込んできたりする9月ごろからですね。
「あれ?ひょっとして…」と、我が家や物置などを見て回ってみて、でかい巣の周りをブンブン飛び回っている働き蜂を見て危機感を感じる。意外と普段気にしないものなんです。
そこで慌てて自分で駆除するということになれば業者に頼まなくても結構投資が必要ですよ。
![]() 庭の生垣にできたコガタスズメバチの巣 コガタスズメバチの女王蜂が作る最初の巣は徳利型。この入り口は巣が大きくなるにつれ、必ずしも下になるとは限らない。オオスズメバチに模様が似ていて区別がつきにくいですが、小型です。 |
![]() キイロスズメバチの初期の営巣。すでに何匹かの働き蜂も育房(いくぼう=六角形の小部屋)で育っているようだね。幼虫が吐き出す糸で白い蓋がされている。サナギ化し、やがて働き蜂が生まれ、女王蜂の単独での営巣が終わる。 入り口は大きくなっても1か所。内部が覗けます。 |
6月頃のこの写真の状態で駆除すれば、残った巣をめがけてさらに恐ろしいオオスズメバチが襲いに来ることもないし、女王蜂が生き残り、また巣作りを始めることもない。
5月頃から6月頃にかけて自分の家の周りをよく点検して回ることをするべきですね。
巣が大きくなったら駆除するのに周到な準備が必要になりますから。
Step2 駆除に必要な道具類の準備をしよう。
7月の初め頃かなり大きくなって厭でも気が付く程度の巣の大きさになっていることを想定しています。駆除は夜間となります。
5から6月頃の小さな巣では昼間の駆除も可能です。
スズメバチ用防護服 ![]() |
下に厚手の服を着たうえで着用します。皮膚と密着していると針が通る可能性がありますので下に来ている服との間にゆとりがあります。 購入: 4~5万円(業者に頼んだ方がましなくらいだね。) リース: 約10,000円程度からいろいろあると思うよ。 市町村援助:駆除自体を無料もしくは安価に行ってくれる市町村、業者を紹介してくれるだけの市町村、 業者に頼めず、自分で行う方には申請書を提出すれば無料貸し出しを行う市町村もあります。ご自分の市町村役所役場に問い合わせてみるといいですよ。 |
脚立・はしご
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巣の高さによって殺虫剤や巣の撤去が確実にできるものが必要です。 |
巣を落とすための長さの棒 |
脚立やはしごの上で使用するのに適した長さの丈夫なもの。例えば高枝ばさみや枝切り鋸が付いた長さ調整付道具や伸縮自在の軽量の物干竿など。 |
殺虫剤(スズメバチ用) 450ml缶エアゾール 噴射力が強力なものが望ましい。例えば ![]()
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いくつか種類がありますが、ホームセンターなどにありますので準備してください。殺しきれなかった蜂が戻ってくることもあるのでできればもう1本予備があればいいですね。 これは多分に心理的なものもあるのです。蜂はゴキブリやハエより殺虫成分に抵抗力がないので、蠅やゴキブリ用でも結構効きますけどね。 |
懐中電灯 |
夜間作業ですから必要です。片手に殺虫剤の缶を持っていますから両手が使えるよう、夜釣りなんかで使う頭に付けるものがあれば便利です。
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赤いセロハン紙 |
懐中電灯の光を直接巣に当てるので、蜂が光を目指して飛んでくることがあります。電灯の発光部分に蜂が判別しにくい赤いセロハン紙を巻いて照らすと作業がしやすいですよ。 |
巣が入る大きさのビニール袋 |
後処理に必要です。丈夫なものがいいですが、薄いものは二重にしましょう。ごみ処理用です。 |
ポイズンリムーバー ![]()
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虫毒の吸引器です。1000円台からあります。 万が一のために準備しておきましょう。メーカーはいろいろ。使い捨てではなく、ハチ毒に限りませんのであればいろいろ便利です。 |
以上が準備に関連する2つのステップです。
駆除の方法・手順はどうするの?
巣が小さい場合と大きくなった場合の2つに分けます。
Part 1 作り始めの巣について(5から6月頃の働き蜂が少ない小さな巣)
スズメバチの巣の下見 |
昼間、巣の入り口から蜂が見えなければ、居るかどうか確認するため、巣の付近を軽く高枝ばさみで叩いたりして確認します。蜂が中に入れは入り口に顔を出したり、外に這い出てきます。やり過ぎないように。 |
駆除の開始時刻 |
蜂の数も少ないので昼間でも大丈夫ですが、防護服の着用はして下さい。 |
駆除 |
蜂がいるのを確認したら巣に近づき、(1から2mの距離)巣の入り口に向け蜂が飛び出してくるまでスプレーを続けましょう。蜂が飛び出してくるときの羽音や警告音にひるまず、続けます。防護服が守ってくれますよ。 殺虫剤が体に付着した蜂は巣の外で死にます。
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後処理 |
蜂がいなくなったら、巣の根元を切るか、あるいは棒で叩き落して取り除き、ビニール袋に入れます。 昼間の駆除ですので残りの蜂が帰ってくる可能性があります。よく観察してエアゾールで処理しましょう。
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Part2 7月以降で巣がある程度大きくなり、危険度も増した状態での駆除
駆除の下見から実施、手順までを紹介します。
スズメバチの巣の下見 |
昼間の間に巣の位置や巣の入り口を確認しておきます。近づきすぎると危険なので双眼鏡などで遠くから確認しよう。どこにはしごをかけるか、作業の位置も頭に入れてね。 |
駆除の開始時刻 |
ハチは暗闇では飛ぶことができないため、日没の3時間後、21時ごろから駆除を行います。 ただし、モンスズメバチは8から9月の活動期には夜間9時ごろまで暗い中を活動します。それでも動きは鈍いです。 キイロスズメバチは巣の表面にいる蜂の数が、夜間は昼間よりはるかに多いです。 夜は活動できないため、身を挺して巣をガードしています。蜂の多さに驚かないように。覚悟を決めてください。
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駆除step1 |
巣に1から2mまで近づきます。巣の近くの灯火は消しておきます。懐中電灯をつけたりして巣の位置の見当をつけておきます。 |
駆除step2 |
巣の位置関係を確認したら風上から巣に向けて殺虫剤を吹き付けます。作業を始めたら懐中電灯は消してください。 夜間でも電気がついていれば、コントラストの強い白はかえってスズメバチの目標にもなります。 赤いセロハン紙はそのための保険でもあります。
暗闇で蜂が大きな羽音を立てて飛び回りますからかなり恐ろしいですが、2,3分はスプレーを続けることです。 ※この時怖くなってもうやめたいと思ったら迷わず中止です。業者に頼んでください。
羽音がしなくなっていたら懐中電灯で確認し、念のために巣の内部目がけ10から15秒程度スプレーします。 ※殺虫剤を吸い込まないように! 作業時間自体はあっという間だと思います。 キイロスズメバチの場合、巣が大きいとどうしても周りに飛び回ってしまう蜂が出てきます。この蜂をできるだけ少なくするために、赤いセロハンを外した懐中電灯を地面に置いて点灯し、その灯りに向かってゆく蜂を呼び寄せてからスプレーで駆除してください。
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後処理 |
巣の表面の蜂もなく、巣の中からも出てこなくなったのを確認してから巣を取り除きます。 届くならば巣をビニール袋ですっぽり覆い、巣の根元の付着部分を取り除きます。 同じ場所に巣を作らせないため、その付近にスプレーをかけておきます。届かないならできるだけ形を崩さないように下に落とすしかありませんが、 大きな塊は袋の中に拾い集め、あとは明日の朝早く始末しましょう。
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駆除後の注意点
■Point1死んだ蜂に触れない。昆虫の生命反応は心肺停止で終わるわけではなく、筋肉の反射運動は頭や腹がなかったり、潰れていても消えていないことがあります。尻尾辺りを掴んだ瞬間に刺されて、アナフィラキシー・ショックを起こし、』救急車のお世話になるということもあるそうです。死骸の処理にも気を配りましょう。
■Point2 戻り蜂の処理 巣を完全に処理したと思っていても、夜間の作業ですので翌日になると巣のあった場所やその近くにたくさんの蜂が飛び回っていることがあります。巣がなくて困惑して飛び回っているのです。もしも女王蜂がその中にいたら再び巣を作る可能性があります。
丁寧に安全なところからその集団に殺虫剤を使用して駆除しましょう。
作業中に刺されてしまったらどうする?
ハチ毒は複雑で蟻のような蟻酸(ぎさん)ではないのでアンモニアのようなアルカリ性の成分で中和することはできない。また、アンモニアは新しい尿の中にはありません。腐敗して発生するものです。
ポイズンリムーバーなどの毒液除去の応急処置を行い、病院に行きましょう。

処置後、30分程度で下記の症状が出なかったら大丈夫です。
また、素早く処置したにもかかわらず、刺された部分が大きく腫れあがる。激痛や発疹がある。心臓がどきどきしてきたなどの症状があれば、迷わず救急車を呼びましょう。一度納まってもぶり返すこともあります。様子見はやめましょう。命にかかわりますよ。(アナフィラキシー・ショック)
まとめ
ミツバチやアシナガバチと違い、スズメバチの駆除を自力で安全に行うためにはそれなりに周到な準備が必要だと考えてください。
|駆除に必要な条件では駆除に適した時期、駆除を自分で行うための道具、装備を見てきました。
また、蜂の種類について、どうしてもやめた方がいいと判断したオオスズメバチに関しては僕自身に駆除の経験がなく、土中にある巣の確認にも経験と、掘り出す労力が必要と思われ、適用外とさせていただきました。業者による駆除をお勧めします。
|駆除の方法・手順については5月、6月規模が小さな鉢の巣と、比較的巣が大きくなった7月頃の巣を攻撃性の強いキイロスズメバチを想定して説明しました。
こちらは夜間の駆除になります。ただし、キイロスズメバチの巣が最も成熟した大きさとなり、働き蜂も戦闘のために十分数が揃った10月頃から秋の終わりにかけては、巣の大きさに比例して蜂の数も多く、戻りバチの処理も含め、未経験者は、やめた方がよいのではないかと思います。
|駆除後の注意点として蜂の巣の除去後の注意にも触れました。
|万が一の処置として、刺されてしまった場合の虫毒の応急除去としてポイズンリムーバーについて触れております。使用法は装備の部分で動画を紹介しています。
もし、自分で駆除をお考えであれば準備を怠りなく、また家族やご近所の方々に迷惑が掛からないよう慎重に行うようお勧めします。
また、自分で駆除を考える前に業者におおよその見積を聞いておく方がいいね。市町村の貸与がなく、自分で装備を整えても、結構なお金がかかりますから。安く上げようと思ったらその分危険は増えます。
某市町村で貸し出されるスズメバチ駆除用防護服。申請書を提出し貸与される。
おつかれさまでした。 お読みいただきありがとうございます。