
スズメバチの危険性については今更言うまでもないと思うけれど、刺されれば命を落とす可能性が極めて高い。刺された後も人体に様々な後遺障害を残すこともある。
毎年スズメバチによる刺傷事故により死亡する人は20名を超える。動物を含めた生き物としてはトップクラスの危険性だよ。
お家の軒先や屋根裏のスズメバチの巣が大きくなるシーズン。アウトドアの機会も増える。お墓参りや、庭木の手入れ、いろんな機会に危険がいっぱい。
そんなこと考えてもみない人だって、黄色と黒の警戒色の4センチを超える昆虫が、ブーンと重い羽音を立てて周りを飛び回ったら、これは怖いよね。身の危険を感じる。
そうならないための対策や対処法をまとめてみたよ。
スズメバチはなぜ危険か-毒のカクテル

真剣な対策・対処法のためにスズメバチの毒液のやばさを知っておこう。
スズメバチの針毒は複雑で微量の成分の混合物であり、それぞれの成分の混合比や組織はスズメバチの種類によって違いがある。
ヒスタミン |
炎症作用 |
神経毒 (セロトニン、アセチルコリン |
多量であれば呼吸不全や心肺停止の原因になる。 |
ペプチド類 |
アナフィラキシーショック(急性アレルギー反応の原因 |
タンパク質類 ホスホリパーゼ |
細胞組織を分解する アナフィラキシーショックの原因」 |
タンパク質類 プロテアーゼ |
体内たんぱく質を分解 アナフィラキシーショックの原因 |
これらの毒物質は素早く皮下組織に拡散し、血流を介して全身に広がってゆく。そして、免疫や神経系統を混乱させ、急性アレルギー反応(アナフィラキシーショック)や激痛を引き起こす。
また毒液には様々なフェロモンが含まれており、一匹が刺したことにより、そのフェロモンが他の蜂に情報として伝わり、多数の蜂の攻撃を誘引するので厄介です。そんな厄介なスズメバチに刺されるのはごめんですよね。
いろんな場面で最適の対策を見ていきましょう。
刺されないための対策その1 家の周辺、軒下での遭遇

軒先の巨大なキイロスズメバチの巣。これは業者に依頼するのが望ましいね。駆除しかない。
スズメバチの仲間は巣や縄張りについて強い防衛本能を持つ。巣や縄張りから10メートル以内に近づくとその相手の周囲を飛び回り警戒活動を始める。
それ以上の行動を起こさず、おとなしく立ち去ることを求めるヒメスズメバチなどは温厚な方で、民家の軒下や屋根裏などに営巣するキイロスズメバチなどは、より好戦的。警戒行動なしで襲われることもある。
温厚な種類であっても人間の方が驚いて叩き落そうとしたり、払いのけようとすると興奮し、刺してくることもある。
スズメバチが自分の周りに飛び回っているときは、すでに彼らの警戒する範囲に足を踏み入れてるということ。自分の家の軒下だって安全ではない。おまけにあなたはすでにロックオンされているのだから、それなりに冷静な避難行動が必要になる。
刺激しないようそっとその場を立ち去る慎重さが求められる。成熟した大きな巣ができている10月~11月は特に危険。決して自分で駆除しようと考えない方がいい、業者に依頼する方が安全ですよ。
駆除代は場所によって違うだろうけど、これくらいの大きさで大体2万円くらいじゃないかな。
刺されないための対策その2 山歩き・渓流釣り-警告音

組織されているスズメバチの集団には、巣の入り口に常に巣の安全を図るために見張りがいる。自分たちの巣に近づくものがあれば、相手が気づいていても、いなくても、左右の大きな顎を「カチカチ」と噛み鳴らして威嚇する。
山歩きをしていたりして、巣に近づきすぎたり、蜂と接近しすぎているにもかかわらず、木々の葉にさえぎられたり、逆光の中で巣やハチ自体が見えないこともある。また、特に危険なオオスズメバチは土中に巣を作るため、その入り口に分け入っていることに気づきにくい。
このスズメバチの「カチカチ」という音は警告音であり、いわば、僕らに対する最後通告でもある。
残念だが、相手の国境線をいわば無断で越してしまって、警告に対し無視を決め込んだ状態といえるね。
ミサイルはすぐに飛んでくる。
学生時代、植物採集に夢中になっていて、ボクは彼らの警告に気づかなかった。たまたまその時着ていたブレーカーが白で、帽子も白。生成りのジーンズといういで立ちであったこと。上り坂であり、そのまま地面にへばりついた状態で、後ろ向きにじわじわと下がってゆくことができる状態であったことが幸いしたのかもしれない。
オオスズメバチはボクの帽子の縁に止まり、ブブン…ブブンと間欠的な音を立てていたが、ゆっくりと後ろ向きに遠ざかるボクがテリトリーから離れたのを確認したのか唐突に飛び去った。ほっとしたその時、気づかなかったけれど、実は背中の方にも一匹いたんだね。そいつは時間差をつけて飛び去っていった。ぞっとしたね。
教訓 スズメバチの「カチカチ音」はたまたま耳に入ってくるというより、そういう場所に行く僕たちはその音を拾いながら散策するべきだね。
|刺されないための対策その3昆虫採集

夏休みになると子供連れでのトレッキングや昆虫採集がアウトドア派のお父さんの活躍の場になる。
クヌギやカエデやコナラなんかの山道沿いの樹を堅いシューズの底で思いっきり蹴っ飛ばすと、バラバラとそこらの草むらや道の縁にクワガタムシが落ちてくる。(カブトムシが落ちてくるのをボクは経験したことはない。)
よく漫画なんかには出てくるシーンだけど、ホントだよ。びっくりするんだろうね。気絶の状態。ノコギリクワガタやヒラタクワガタをよく見つけた。お父さんは蹴っ飛ばす係で、子供はその木の下で歓声を上げて草むらをかき分ける。
でも、その時樹上にスズメバチがいないかどうか、確認はお父さんの責任だよ。携帯望遠鏡でよく見ておいてね。 木の浸出液を吸っているのが、たくさんのスズメバチだけだったり、圧倒的にスズメバチの数が多かったりしてほぼ独占状態だったら、どんなに大きなヒラタがいても蹴っ飛ばしてはいけない。
スズメバチの成虫達が自分のための栄養補給をしている状態なので、いわばそこはテリトリーなのです。巣を攻撃されたのと同レベルの反撃が待っています。
刺されないための対策その4-渓流釣りの野宿・キャンプ

森の中でのキャンプは楽しい。家族連れ、仲間同士のバーベキュー、渓流釣りの野宿でのビールの一杯アウトドアのだいご味だけどね。飲みかけのジュースやアルコールはスズメバチの糖分補給のために大変魅力のある飲み物なんですね。続きを飲もうと缶を握った瞬間に刺されたり、口を刺されたりね。彼らは甘い果汁の匂いを好むから飲み終わった缶はすぐに片づける。
飲みかけのビールやジュースには蓋をしたり、スズメバチを自分で誘引しない工夫をしよう。
刺されないための対策その5―お墓周りの事前点検
8月半ばのお盆のころの墓参りにはスズメバチの巣次第に大きくなっている途中であり、働き蜂の数も多い。テリトリーは広がりつつある。そして、9月中旬、秋の彼岸ともなればすでに巣は成熟し、スズメバチの攻撃性は高まっている。
おまけに墓参りには黒っぽい服装が多く、女の人も山歩きなどには控えている化粧もするよね。香水や化粧品にはスズメバチの警報フェロモンと似通った物質が含まれていることが多い。オオスズメバチやキイロスズメバチのような図抜けた攻撃性を持つスズメバチが興奮する要素がいくつも重なることになる。黒い色は周囲の色から強いコントラストを持っていて、彼らの巣を襲う他のスズメバチの黒と黄色の体色と同じく攻撃の対象となりやすい。
でも、決して白が安全だと言い切れない刺傷事故も実際には起こっているからどうも白い服だから絶対安全とは言い切れないようだね。興奮したらあんまり、色関係ないのかもね。
まあ、それでも、黒い色よりもかなり安全だということはできそうだな。
だからお墓参りは白服で。…ダメだろうね、多分。そうなればお墓のある場所の環境をよく知り、スズメバチが営巣しているようなことがないかどうか確認しておくことが大切だね。
|刺されないための対策その6-室内での遭遇

スズメバチに刺されない対策としていくつかのパターンに分けてみて来たけど、最後に自分の部屋の間での隙間からスズメバチが一匹入ってきて飛び回っているような場合を考えてみよう。
なるべく体を低くしていると安全性が高いけど、ブンブン飛び回って近づいてくるけど、この警戒行動は興味本位の観察的な行動であり、こちらが慌てて振り払ったりしない限りそれ以上の攻撃行動には出ない。向こうも部屋に入る気はなかったんで、面食らってるところもあるらしい。
だから大きく窓を開けてあげると何度か飛び回って、そのうちそこから出られるとわかれば、すぐに出て行く。出て行ったらすぐに窓を閉める。何故かわからないけど戻ってくることがあるんだよね。
ハエや蚊のための殺虫剤を近距離から噴射しても駆除は可能だけど、なるべく体を低くして吹き付ける。相手は上下の動きが苦手だ。スズメバチはでかいからなかなか死なない。その間こっちが部屋の外に出てスズメバチが完全に動かなくなるまで待つ方が安全。

死んだという確証があっても指で直接つまんだりしない。
こんなふうに横向いてたり、お尻を上に向けて動かなくなっているけど、指で触ると、筋肉の反射で針が飛び出したりする。
写真の二匹は体毛が少なく、尻尾の先が黒いことからヒメスズメバチだと思うが、都会でも巣分かれする女王候補を追っかけて部屋に迷い込んでくるオスの迷いバチもいる。どんなに大きくても、オスの蜂は針がないので絶対刺さない。メスであっても温厚で毒性も低い。怖がらせないようにそっと窓を開けて外に誘導してあげよう。
|ここまでのまとめ
|スズメバチはなぜ危険かでは対策を考える前提として、スズメバチの針毒の特殊な危険性について書いた。彼らはこんな毒を持つ攻撃性の強い蜂なのです。
|刺されないためのその1、2のパターンはスズメバチが意図的攻撃するのではなく、通常は警戒、警告、攻撃の手順を位踏むということ。残念ながらその手順を無視するのはその音と、大きさにビビってしまう僕らの方なんだよね。言い換えれば、いきなりの攻撃を受けたように感じても、その前段階を僕らが気づいていないということが言える。
そして、寄せないためには黒い色の服は避けること。
|刺されないための対策その3ではお父さんが危険回避
|刺されないための対策その4ではスズメバチを誘ってしまうような環境を作らない。キャンプでもバーベキューなどでアルコール類やジュース類を飲むときの注意は覚えていてね。
|刺されないための対策その5墓参りは黒い服が多い。スズメバチの攻撃を誘引するフェロモンと香水はよく似ている。この場合はあらかじめお参り前に駆除しておくのが一番。
|刺されないための対策その6 では冷静にスズメバチの種類を見極める。落ち着いて窓を開け外に誘導する。できなければ殺虫剤を噴射。完全に死ぬまで触れない。というようなことでした。
|駆除について
いくつかの対策部分で書いたけれど、9月から11月の成熟した巣に対して素人が駆除を試みることは感心しない。業者さんはスズメバチの活動が静まってくるタイミングを知っており、防護服を準備し、万が一に刺された際の毒を吸い出す器具の準備も整えている。多量の殺虫剤の使用についても的確な指示を行う。餅は餅屋なのです。
おつかれさま 読んでくれてありがとう