
触角が立ち前肢が育房の縁にかかってまさに何かに向かって飛び立とうとしているように見える。攻撃準備?
スズメバチのトラップって知ってる?某国営放送でも取り上げられていた。以来、養蜂家のスズメバチ対策としてだけではなく、一般の民家や庭先でも商品化されたものや、手作りと思えるものが使われている。市町村も環境課等で検証し、『効果あり』と結論し、市民頒布用のトラップ作成のオリジナルパンフレット等をそれぞれのサイトで公開したりしている。
ここではスズメバチのトラップの実効性・使用時期・効果の範囲等を考慮しながらペットボトルを使ったトラップのつくり方なんかを紹介していくよ。
スズメバチトラップの効果は本当?いつ使えばいいの?
スズメバチのトラップについての効果はすでに養蜂場などで実際に使用されており、実証済みといっていいね。ただ、これは「駆除」と呼ばれる直接的なスズメバチの営巣撤去を目指したものではない。スズメバチの生態を知り、被害を間接的に減少させることを目的としている。その結果自然界のスズメバチの数をコントロールしようとするものだね。
ちなみに、トラップの恩恵が最も大きいのはセイヨウミツバチを飼っている養蜂場ですね。ニホンミツバチはオオスズメバチとの長年の闘争で、極めて組織的に対抗する迎撃手段を行使します。
しかし、天敵オオスズメバチが存在しない場所で生息していた種であるセイヨウミツバチは、遺伝的にニホンミツバチのような組織的攻撃方法はとれないんだね。
かれらはオオスズメバチに対して、騎士道を発揮し、一対一で挑みかかり、巣箱の入り口で待ち伏せするオオスズメバチに次ぎ次と大あごで噛み殺され、被害が甚大化するのです。オオスズメバチの初期飛来がトラップにより防止できれば被害は最小限にとどまります。
Point1:スズメバチトラップの目的
5月頃から6月にかけて越冬から目覚め、女王蜂がたった一匹で営巣と産卵と子供たちの食糧調達を行う点に注目したものです。
また、この時期が少し遅れても、働き蜂の数は極めて少なく、女王蜂も働き蜂とともに営巣、育児、狩りを行うので、数が少ない彼らをトラップによって誘引し、捉えることができれば、その後の活動を減退させ、結果的に被害を最小限にとどめようとするものだといえる。
商品化されているものはいくつもある。

これらは基本的にスズメバチの成虫が栄養補給を行うために果実や花蜜を求めることに着目し、これをエサとしている点が共通している。餌の成分配合はそれぞれの商品によって異なる。
Point2:捕獲したスズメバチはどうなるの?
2時間ほどで死んでしまいます。これも、スズメバチの成虫の性質に関係しています。スズメバチは通常幼虫の餌として、捕獲した昆虫の筋肉部位を肉団子にして巣に持ち帰り、幼虫の餌にしますが、その際、幼虫から(BAAM) と呼ばれる蜜をもらうんです。この蜜は成虫が蓄えた脂肪を分解して直接エネルギー源とする役割を持っています。
だから、捕獲されてこれが入ってこないと成虫はエネルギー源の補給ができず、やがて死んでしまうのです。
Point3:市町村の対応
温度差はあるがいくつかの府市区町村、例えば大阪府も環境行政の一環としてスズメバチトラップの有用性を確認し、市民生活に影響を及ぼす恐れがあるスズメバチの種類(コガタスズメバチ・キイロスズメバチ)をあげ、トラップのつくり方を紹介している。
対スズメバチ用オリジナルペットボトルトラップを作ってみよう!
大阪府をはじめ、いくつかの市町村のスズメバチ用トラップを参考に自分なりのトラップを作って試してみよう。ただし、本当に目的とする効果が得られるのは5月から6月にかけてということを念頭にね。
このシーズンを過ぎてスズメバチが大きな巣を作り活動が活発化した時には、スズメバチは取れるかもしれないけど、このトラップの目的は果たせない。
かえって餌をぶら下げてたくさんの蜂を誘引しないように気を付ける必要があるよね。また、あまり早く仕掛けてもスズメバチは入らない。だって、狙ってる女王蜂はまだ冬眠中だもんね。
- Step1 ペットボトルの準備
- Step2 誘因のための液体は何がいいか
- Step3 どこに仕掛けるか
- Step4 捕れたスズメバチの処理
この4つに分けてみていこうか。
Step1 ペットボトルの準備
2リットル程度の大きさのもの。表面にあまりで規模かがない、炭酸系の飲料水を入れるボトルは丈夫で穴を開けにくいが、トラップを作るには適している。
作図は名古屋市のものを参考にさせていただいた。

切り込みの上を外に折り曲げるのは庇(ひさし)であり、下の切込みを内側に折るのは誘引したスズメバチを逃がさないためです。
穴をこれ以上大きくするとカブトムシとかより大きな甲虫の侵入を許し、彼らが切り込みを曲げるとせっかく入っているスズメバチ迄逃がしてしまうこともあります。最大2センチから1.6センチ以内にしましょう。
Step2 誘引剤:いろんなレシピがある。
■レシピ1 お酒・酢・砂糖を約2:1:1の割合。2リットルペットボトル1本につきそれぞれ、180cc:60㏄:75㏄
■レシピ2 日本酒:酢:ジュース(経験上グレープジュースがよい100%果汁+本物のブドウの皮を加えると発酵が早まる。)ちなみに、ジュースのラベルにその果物の絵や写真が使用できるのは本物の果汁を使用したものだけです。
■レシピ3 カルピス:水 6:4の比率で混合し、常温で発酵させて使用。ブドウの皮を入れると発酵が早い。
■レシピ4 焼酎(匂いのきついもの):オレンジジュース1:1
とまあ、勝手にいろんな方法がとられています。
山道で子供がジュースを服にこぼして狙われたのはグレープジュースでした。どうも彼らの好みはブドウの香りらしいです。ポイントは発酵させること。おすすめはレシピ2ですね。
どれも大体ボトルの底から3分の1ないし、4分の1程度で使用します。
Step3 どこに仕掛けるか
庭木など家の周囲の樹木の枝、軒先(人の出入りする場所から3mほどは離すこと。安全のためだよ。)高さは2mくらいで(子供が触れない高さ)直射日光で液内の微生物が死なないように日影がいいよ。
あまり入っていないときは設置場所を変える。ただ、蜂を誘引するためのものだから人の往来があるところは危険だよ。
誘引液は蒸発するから少し多めに入れた方がいいかもしれない。
Step4 捕れたスズメバチの処理

トラップは1週間くらいで回収。あまり捕れすぎると、浮いている死骸の上に新しく入ったスズメバチがとまり、死骸を餌にして生き延びます。不用意に蓋を開けたりすると危険です。死骸でも反射で針を出すことがあるよ。不用意に扱わないように。
まとめ
スズメバチの捕獲用のトラップは実効性がある。
ただし、トラップを設置するためには目的を把握することが必要。5月から6月までの1か月の間で、巣が小さく、女王蜂一匹だけか、数匹の働き蜂がいるに過ぎない時期にこれを誘引して繁殖を止めるためだよね。
そのためのトラップには市販されているものから、ペットボトルを利用して自分たちで作るものまで様々で、誘引剤の配合もいくつものレシピになっている。そこには都道府県市町村のあらゆるレベルの生活環境行政が温度の差はあっても情報を提供している。シーズンになれば死亡者は毎年20人を超える蜂の刺傷事故はそれだけのものなのです。
でも、ここでもう一つ僕らは考えなければいけないことがある。この方法は対処的に巣を駆除するよりも長い目で見ればはるかにスズメバチにとって脅威なのじゃないか。
例えばオオスズメバチが現在数を維持しいくためにはその獲物となるキイロスズメバチの繁殖数の影響を受ける。餌が極端に減れば同時にオオスズメバチの数も抑えられる。
そのために今の自然のバランスが大きく崩れて行きはしないか。ニッチ(食物連鎖)の頂点にあるものが消えた時、その数の何百倍ものニッチの下部の虫たちが一斉に増加することになる。
僕ら人間はその愚かな繰り返しを『人間に危害を及ぼす』という理由で自然の理(ことわり)の外側から影響を与え続けてきた。
もう廃園になりましたが、ニューヨークにあったブロンクス動物園の展示室には見学者の方に向けられた等身大の鏡が置かれていました。『世界で最も危険な動物』という紹介があり、以下の説明が添えられていました。
「この動物は、24時間ごとに19万匹の割合で増えています。地球上で他の動物を絶滅させたことのある唯一の動物です。この動物は、今では地上の全ての動物を絶滅させてしまう力を手に入れました。」
怖いのはスズメ蜂じゃないかもね。
実際に自然環境のバランスを崩す恐れがあると、あえてトラップを設置しない都道府県があることも付記しておきたい。
おつかれさま 読んでくれたありがとう。